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前立腺がんについて

前立腺がんの分類(病期と悪性度)

前立腺がんの病期分類(TNM分類)

前立腺がんの治療方針を決定するときには、がんの進行の程度や悪性度を評価するための分類が用いられます。病期は、がんの広がりの程度(進行度)や前立腺以外の組織への転移の有無などに基づき決定され、その分類法にはいくつか種類がありますが、ここでは一般的によく用いられる「TNM分類」をご紹介します。
TNM分類は、前立腺がんを「T:がんの広がり」、「N:所属リンパ節への転移の有無」、「M:遠隔転移の有無」の3つの要素で評価します(表1)。所属リンパ節とは、前立腺からのリンパ液が流れている前立腺周囲のリンパ節のことです。また、遠隔転移とは、前立腺から離れた組織(骨、肺、肝臓など)やリンパ節へがんが転移していることを意味します。

表1 TNM分類

表1 TNM分類

例えば、前立腺の被膜をこえてがんが広がっているが、リンパ節転移・遠隔転移がない場合は、「T3N0M0」と表記されます。
また、病期はTNM分類などに基づき、以下のようにA~D(Stage Ⅰ~Ⅳ)の4つに分類されることもあります(表2)。

表2 病期分類(Stage Ⅰ~Ⅳ)

表2 病期分類(Stage Ⅰ~Ⅳ)

組織学的分類(グリーソンスコア)

組織学的分類は、がん細胞の特徴からがんの悪性度を表した分類のことです。悪性度とは、がん細胞の増殖、転移、再発のしやすさの程度を表したもので、前立腺がんでは「グリーソンスコア」が広く使用されています。グリーソンスコアは、2から10までの9段階で、数字が大きいほど悪性度が高いことを示します。
グリーソンスコアを判定するためには、顕微鏡で前立腺がん細胞の構造パターンを観察します。前立腺がん細胞の構造は一様ではないため、正常な前立腺細胞の構造に近いパターンは1点、悪性度が最も高いパターンは5点として、がん細胞全体を5段階で評価していきます()。そして、観察したがん細胞のパターンのうち、占める面積が最も大きいものと2番目に大きいものの2つの点数を合計します。この合計スコアがグリーソンスコアです。

図 グリーソンスコア

図 グリーソンスコア

リスク分類

転移のない前立腺がんは、治療開始後の「再発のしやすさ」を考慮して治療方針が決められます。そのときに用いられるのがリスク分類です。リスクとは「再発のしやすさ」のことで、例えば低リスクに分類された前立腺がんであれば、治療で根治する可能性が高いことを意味します。前立腺がんのリスク分類は複数ありますが、多くの場合、①病期分類(TNM分類のうちのT分類[がんの広がり])、②グリーソンスコア、③PSA値の3つの要素から、再発リスクを「低リスク」、「中間リスク」、「高リスク」の3つに分類します。